08.29
賠償3000万円「年金で払います」 妹を殺した受刑者の空虚な贖罪
どうして1円も支払わないのか。妹を殺したことによる賠償金だ。裁判所が3000万円近くの賠償を命じているのに、加害者は「年金で支払います」と口で言うだけで実際には贖罪(しょくざい)に動こうとしない。遺族の稲田雄介さん(31)=大阪市=は督促のため拘置所に通い、憎しみを押して加害者と交渉を続けているが、理不尽だと感じている。どうして犯罪被害者の自分がここまでしないといけないのか
賠償命令まではスムーズだったが…
大阪市北区でカラオケパブを経営していた妹の真優子さん(当時25歳)が殺害されたのは2年前。2021年6月、常連客で元会社員の宮本浩志受刑者(58)に店内で刺殺された。刑事裁判にかけられた宮本受刑者は殺人罪の起訴内容を認めるかどうか明言しなかったが、1審・大阪地裁判決は、好意を受け入れてもらえなかったことが動機と推察できるとして「無慈悲で残酷な犯行」と認定。2審・大阪高裁も同様の判断を示し、懲役20年の刑が23年7月に確定した。
稲田さん一家は4人家族。決して裕福な家庭ではなかった。真優子さんは高校生の頃から「お父さんとお母さんに人並みの生活をさせてあげたい」と口にし、働き始めると両親に食事や洋服をプレゼントした。足の不自由な父親のため、スロープ付きの家を買うことを目標にしていたという。
家族の明かりのような存在だった真優子さんの命が突然奪われ、遺族は悲嘆に暮れた。両親は「せめて経済的な償いをしてほしい」と宮本受刑者に損害賠償を求めることにした。
利用したのが、08年に始まった国の「損害賠償命令制度」。刑事裁判の記録を基に加害者へ賠償請求するもので、殺人事件の遺族らが2000円の手数料で利用できる。有罪判決後、刑事裁判を担当した裁判官が引き続き損害賠償に関する審理を担当する。被害者が新たに民事訴訟を起こす必要がなく、審理も原則4回以内のスピード決着で、被害者の負担を減らすメリットがある。





