06.24
新型トヨタ・アルファード&ヴェルファイアのメカニズムを徹底解説!──日本の高級ミニバンは運転しても、後席に乗ってもイイ!
フルモデルチェンジしたトヨタ「アルファード」および「ヴェルファイア」が採用したメカニズムのポイントを、世良耕太がわかりやく解説する!
レーシングカー並みのボディ剛性向上策
トヨタの大型ミニバン、アルファードとヴェルファイアが約8年ぶりにフルモデルチェンジした。ちなみに今回のモデルチェンジを機に「“大空間最高級サルーン”に生まれ変わった」と、メーカーは謳う。生まれ変わるべくコンセプトを設定し、開発に取り組んだのだ。
アルファード、ヴェルファイア、両車に共通する開発の狙いは、運転する人、後席に乗る人の区別なく、「快適な移動の幸せ」を、感じられるように仕立てることだった。そのため、プラットフォームを一新。先代は「エスティマ」などと共用するMCプラットフォームを採用していたが、新型は最新世代のGA-Kプラットフォームを使う。「カムリ」、「RAV4」、「ハリアー」、「クラウン」などと共用する。

プラットフォームは「GA-K」をミニバン用に最適化。車両剛性は従来型と比べ約50%アップした。くわえて構造用接着剤の塗布を最適化し、ボディの変形を抑制。優れた操縦安定性と乗り心地を実現した。
フロントのサスペンション形式はストラット式、リヤはダブルウィッシュボーン式で形式自体は先代と変わっていないものの、新規開発である。GA-Kプラットフォームはあくまで基礎であって、新型アルファード&ヴェルファイアを開発するにあたって多くの手が入っている。重視したのは剛性の向上で、ドライバーだけでなく、後席の乗員も「快適な移動の幸せ」を感じられるよう、操縦性と乗り心地を向上させた。
車輪とサスペンションを狙いどおりに動かすために、まず、ボディをしっかりさせた。「ミニバンは剛性の確保に不利」と、言い訳をしていたようなところがあったそうだが、「上屋に大きな開口部があるオープンカーだって運動性能の高いスポーツカーができているじゃないか」(開発責任者の吉岡憲一談)と、気を引き締めて調査を重ね、ポイントをつかんだという。

灯火類はLED。
剛性向上のための策のひとつが、床下のV字ブレースだ。リヤサブフレームの中心を交点とし、サイドシルのリヤホイールハウス前方に向けてブレースが延びている。これにより、とくにリヤを中心にボディの変形を抑制する。
「Bピラーのより後ろはなんとしても固めたかった」と、先代に続き開発責任を務めた吉岡は説明する。先代の開発を終えたとき、「これ以上のアルファード、ヴェルファイアは作れない」と、思ったそうだが、意に反して弱点は露呈した。そのひとつがボディ剛性で、弱点を知り尽くしているからこそ新型では「しっかりやれた」と、話す。
サイドシル(トヨタ用語では「ロッカー」)をしっかり固めたのも、Bピラー(フロントドアとリヤドアの間にある柱)より後ろを固めるためだ。先代はスライドドアの構造上、ロッカーを完全な閉断面にできなかった。

ルーフには照明や各種スイッチ類、エアコン吹き出し口などの機能を天井中央に集約した「スーパーロングオーバーヘッドコンソール」を新設した。
新型では製造上の工夫もあり、剛性向上に効く閉断面にすることができた。さらに、最近のトヨタのクルマづくりの定番となっている構造用接着材の塗布量を増やした。先代比でなんと5倍。レーシングカーでも作るのか? と、言いたくなるほどの気合いの入れようである。剛性向上を図るときの定番技術ではあるが、Bピラーを含め環状構造を徹底したのも新型の特徴だ。
こうしてボディの全体剛性を高めたうえで、サスペンションの入力を受け止める局部剛性を高めるため、フロント左右のサスペンショントップを結ぶタワーバー構造とした。また、より走りを意識したヴェルファイアに限り、ラジエーターコアサポートとサイドメンバーを結ぶようにパフォーマンスブレースと呼ぶ補強材を追加している。操舵応答性の向上に寄与する補強だ。

14インチのインフォテインメント用モニターを設置したインパネまわり。
レクサス「RX」譲りの強力なパワートレーンも搭載
タイヤは17インチ、18インチ(アルファードのみ)、19インチの設定であるが、すべてのタイヤを走りのために新規に開発した。ショックアブソーバーは路面入力に合わせて減衰力を可変制御する周波数感応型を設定(一部グレードに標準)し、操縦性と乗り心地の両立を図っている。
乗り心地面では、2列目シートに適用した技術が新しい。シートレールとシートフレームの間に防振ゴム(ゴムブッシュ)を配置。人が不快に感じやすい10〜15Hzの振動を抑制する。

静粛性を高めるべく新開発の低騒音タイヤを採用。カウル等に吸音材を設定するなどロードノイズ発生源への対策、エンジンフードの先端やドアミラー、フロントピラーといった風圧を強く受ける部分の形状を最適化するなど風切音発生の対策などをおこなった。
さらに、シートパッド表層には低反発ウレタンとし、振動を感じやすい背中に伝わる20Hz以上の振動を吸収する設計とした。また、シートクッション部は表面形状の工夫で骨盤を少し前傾させて座らせるようにした。骨盤が寝た姿勢で座ると首の揺れが大きくなるからで、結果、首の揺れが抑えられ、快適性の向上につながる。
先代はアルファード、ヴェルファイアのエンジンラインアップは共通で、2.5L直列4気筒(2AR-FE)と3.5L V型6気筒(2GR-FE)の自然吸気ガソリンエンジンを設定。2.5LエンジンはCVT、3.5Lエンジンは8速ATとの組み合わせだった。さらに、2.5Lにモーターを組み合わせたハイブリッド(エンジンは2AR-FXE)の設定があった。

新型はアルファードとヴェルファイアでエンジンに設定をわけている。アルファードは2.5Lエンジンと2.5Lハイブリッドの設定。ハイブリッドはエンジンが最新世代となり、より高効率のA25A-FXSになっている。3.5L V6エンジンはラインアップから落ちた。
新型ヴェルファイアにも2.5Lハイブリッドの設定はあるが、異なるのはガソリンエンジンの設定で、2.5L自然吸気エンジンの代わりに2.4Lターボエンジンが設定される。「V6を超える力強さ」の、触れ込みで、最高出力は205kW(279ps)、最大トルクは430Nmだ。組み合わせるトランスミッションは8速ATで、レクサスRX譲りの強力なパワートレーンである。

搭載するパワートレインのうちハイブリッドは、2.5L直列4気筒DOHCエンジン(A25A-FXS)を搭載したトヨタハイブリッドシステムを採用し、システム最高出力184kw(250ps)を誇る。
ボディ剛性向上は万能薬だ。操縦性の向上に効くし、乗り心地の改善にもつながる。つまり一挙両得で、ステアリングを握るドライバーにもよろこばれるし、2列目以降のシートでくつろぐ乗員にもよろこばれる。運転する人と後席に乗る人が共によろこんでもらえるよう、技術を惜しみなく投入したのが、新型アルファードとヴェルファイアの最大の特徴だ。





